スポーツ紙を賑わせた、選手の帰化について。
現地報道も読ませていただきました。Diario do Amapaという地方紙のインタビューの
ようでした。いわば神奈川新聞のようなものでしょうか。Amapaは州の名前です。
さて、仮に帰化申請の依頼があったと仮定して(笑)帰化申請の要件について
改めて見つめなおしてみました。とはいえ、ある種暇つぶしではあるのですが・・・
なお、結果として帰化できるかどうか、については国籍法4条2項にあるとおり
「法務大臣の許可」となりますし、そもそもリップサービスで本人の意思があるのかどうか
謎な部分も多いですよね
国籍法 第四条
日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によつて、
日本の国籍を取得することができる。
2 帰化をするには、法務大臣の許可を得なければならない。
どこかの王子のように代表を強くするためにFWに外国人を、というノリはおそらく
通用せず、サッカー協会の陳情があれば多少プラスに傾くのかもしれませんが、
そのあたりの力が本当に働くかどうかわかりませんので、それは考慮しません。
あくまで「要件」をみたすのかどうか、条文を中心に検討してみたいと思います。
帰化の要件
帰化をするための要件は、国籍法第5条に定められています。
国籍法第五条
法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
二 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
三 素行が善良であること。
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を
営むことができること。
五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を
暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは
主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。
一つずつ検討してみましょう~
一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
あと2年で帰化が可能になり、帰化に際しなんら問題はない。というのが報道による
本人の発言の要旨。
帰化は5年日本にいれば申請可能!というのは要件の一つに過ぎませんし5年いれば
許可されるものでもありませんが選手の来歴を確認すると
2013年 川崎フロンターレ
2013年 ヴァンフォーレ甲府
2014年 フォルタレーザ(ブラジル)
2014年 ガンバ大阪~(7月1日から)
ん!?
13年から5年滞在して’18年に帰化! と思いきや、14年に一度ブラジルに帰国して
半年母国チームでプレーしているため、14年から数え始め、帰化申請ができるのは2019年
なのでは、という疑問が出てきました。(あれ?W杯後!?)
条文には「引き続き~」とあります。日本の査証がヴァンフォーレ甲府との契約終了後
一旦失効し住所を有していなければ、要件に当てはまらない可能性がありました。(意外・・)
また、この条文にある「住所」とは民法22条に定められている生活の本拠になります。
仮に査証が有効であっても日本に生活の拠点を残してブラジルでプレーしていたという
ことでなければ「生活の本拠」とみなすことは難しい可能性がありそうです。
(住所)民法 第二十二条 各人の生活の本拠をその者の住所とする。
さて、
そのほかの要件はどうでしょう
二 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
三 素行が善良であること。
このあたりは問題なさそうですね。
2を能力要件といい、3を素行要件といいます。
特に素行要件に関しては日本の法令順守が重要になってきます。
最近車の免許を取られたようなので、道路交通法には気を付けていただきたいところです。
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は
技能によつて生計を営むことができること。
それ相応の収入がおありでしょうけれども、引退後が気になります。引退後の生計は
コーチなどになるのでしょうか。
五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
いまやブラジル国籍も放棄することができますから、二重国籍というわけには
いかなくなりそうです。(国籍放棄手続き@ブラジル総領事館)
六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。
まぁこのあたりは大丈夫なのでしょう。
また、条文には出てこないですが要件の一つに「日本語能力」があります。
一般的には小学校3,4年生程度の日本語能力が求められますし、面接もあります。
一説には過去に某有名選手が面接に行ったものの、日本語がまったく通じなかったため
申請すらできなかったという情報もありました。どうでしょうか
さて
これらの要件を整えたとして、法務大臣はどのような判断をするのでしょうか。
最低限上の条件を備えなければ、帰化を許可することができないのであり、
許可をしなければいけないわけではありません。つまりその裁量は大臣にあります。
個人的には気になります。特に住居要件。